最初の投稿ですので、ここは外せないなという点を書いていければと思います。当相談室を開室するきっかけになったことについてです。
先に結論を書いてしまいます。
WISCが受けられる場所が少ないこと、テストが実施できる人や時間が足りていないこと、そのため支援を希望しても支援が受けられるまで時間がかかってしまうこと。これらの理由から、希望があればすぐにWISCが取れる私設の相談室の開業を考えたということです。簡潔に書くと3行程度でまとまってしまいましたが、現在の学校の状況や背景を書くと長くなってしまいました。なのでこれ以降はお時間のある時にお読みいただければと思います。
私は現在もスクールカウンセラー(SC)として公立と私立の学校に勤務しております。SCとして働き始めた当初はWISC(知能検査)について知っている教員や保護者はかなりめずらしく、知っていたら「この方は相当勉強されているな」と思うほどでした。実際にWISCを取ったことのある児童や生徒は固定学級に在籍していて、知的障害などの判定のために小さい時に取ったことがあるというパターンがほとんどだったと思います。
少し前になりますが平成28年、東京都の学校に関して大きな動きが一つありました。それは平成30年を目途に、特別支援学級を公立小中学校全校に整備するというものでした。
特別支援学級は、主に自閉性障害(ASD)、情緒障害、学習障害(LDまたはSLD)、注意欠如多動性障害(ADHD)を持っており、特別な指導を必要とする児童生徒を対象としています。以前は情緒学級と呼ばれており、地域に何校か拠点校が設置されていました。そのため情緒学級を利用するには在籍校から時間をかけてわざわざ通わないといけないという難点がありました。一方で特別支援学級は自分が在籍している学校にあるので、通常学級に籍を置きつつ一部の時間だけ別の教室で指導を受けられるという利点があります。特別支援教室を利用することで、学習上または生活上の困難さの改善・克服を図ることができるとされています。
この教室を利用するためにはある程度知的に問題がないことが基準なので、知能検査を受けることが求められます。知能検査は地域の教育センターや知能検査を行っている精神科・心療内科で受けることが考えられていますが、そういった機関での検査枠は相当限られております。ある市ではWISCを取ることで相談業務が回らないということで一時教育センターでWISCを取らない、取りたい時は医療機関へということがありました。(フォローしておくとその後また教育センターで受けられるようになったようです。またこの市だけの話ではなく、いくつかの市で似たような話を聞いていました)
ここである事例を載せたいと思います。ある中学生の事例でした。
この事例は私自身が見聞きした様々なケースをいくつか混ぜた上で様々な点を改変しており、個別の事例ではないことをあらかじめお伝えしておきます。
4月。新年度が始まったが、授業に集中できない、対人関係でいつも問題になってしまうことなどから、特別支援教室の利用が必要だと感じる。校内の会議でも「特別支援教室を勧めたほうがいい」となり、学校と保護者とで面談を設定。特別支援教室について説明し、申し込みを勧める。
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保護者は家族、本人とも相談。本人からも了承が得られたので5月に教育センターに知能検査の申し込みを行う。
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8月に予約。知能検査を受ける。検査結果についての説明は10月に行われた。
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結果が返ってきてすぐに検査結果を申込書とともに提出し申請。特別支援教室の審査は年に数回で、最も近い12月の審査会に申し込む。
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1月。審査の結果特別支援教室の利用が認められる。
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特別支援教室の利用が始まる。
この事例でも分かるように実際の支援につながるまでに相当な時間がかかるという点があります。しかし本当に大変なところは「この事例では、学校や保護者の対応、相談申し込み、検査実施、審査への申請」は、かなりスムーズかつほぼ最短時間で早急に進んでいたということです。それにも関わらず結果だけを見ると、5月に申し込みをして実際に支援が受けられるようになったのは1月からということなりました。この中学生は申し込みから半年以上、何の支援も受けることができていなかったのです。市や学校によっては、お試しのような形で特別支援教室の見学や体験を行っているところもありますが、実際の支援には相当な時間がかかるという現状があります。さらに大変な点として、この事例では審査会で申請が通りましたが、場合によっては申請が通らないパターンもあるということです。
本人や家族が支援を受けたいと思っても、WISCが受けられる機会が限られているため時間がかかってしまう、これはとてももったいないことだと思います。そのため、当相談室は「なるべく早急にWISCが取れて、フィードバックを行うこと」を大きな目的に開室しました。教育センターでは無料で、医療機関では保険診療で知能検査を受けることができるので、料金については比較的高くなってしまいます。知能検査の料金についてはまた別の投稿でお話しできればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。