箱庭療法について
箱庭療法は、箱の中に、人、動物や植物、乗り物、建物などのミニチュアを置いたり、砂を形作ったりして、様々な場面や世界を表現することを通して行う心理療法です。
たいていの場合箱の中には砂が入っていることが多く、ミニチュアを置かずに砂に触っているだけでも子どものころの「お砂場遊び」を思い出すような、童心が呼び起こされるような感覚を味わうことができます。
箱庭療法の歴史はおよそ100年ほど前にさかのぼります。1929年、ロンドンで小児科医をしていたM.ローエンフェルトは、イギリスの家庭で子どもがよく遊んでいたという「フロア・ゲーム」から着想を得て、「世界技法」という心理療法を開発しました。その後ユングの教えを受けたスイスの心理学者D.カルフが「世界技法」を発展させ、「砂遊び療法」を開発しました。
日本には、カルフと交友を深めた河合隼雄が1965年に「箱庭療法」として紹介。世界でも類を見ないペースで広がりを見せました。元々は子どものプレイセラピーの一つとして紹介されましたが、現在では病院や心理相談室などで広く使われています。
日本で広がりを見せた理由として、日本古来からある盆栽や盆石(お盆の上に石を置いて風景を作る)といった文化が根付いていたという理由が考えられています。この画像は京都の龍安寺の石庭ですが、このように景色を作るということに親和性があったからこそなのかもしれません。
箱庭療法は遊びなのか、何かの役に立つのか
当たり前のことなのですが、私たち人間は生まれてきた時は言葉を持っていません。成長するにしたがって、親や周りの人と関わりを持ちつながっていき、徐々に言葉を覚えていきます。そして自分が感じたことや様々な気持ちについて言葉で説明をするようになっていきます。
しかし、心の中に渦巻く様々な感情や問題はうまく言語化できないことが多いものです。また人によっては、心の中で何かがうごめく感覚よりも、身体が反応しているような感覚をより強く感じるという方もおられます。
箱庭療法では、こういった言葉ではうまく表現できないような“何か”について、なぜか心惹かれるミニチュアや砂の形という形を取って、箱の中に表現ができるという特徴があります。そしてその作品を俯瞰して眺めることで、自分の心を客観的に見るような体験を得ることができます。その結果、自分自身を深く理解できたり、腑に落ちるような感覚が得られると考えられています。